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【落合陽一インタビュー】ブロックチェーンは日本再興のカギとなるのか?

BITDAYS編集部が気になって仕方ない人にお話を聞かせていただくインタビュー企画。今回は落合陽一さんです。

落合陽一氏 プロフィール 1987年生まれ。筑波大学情報学群情報メディア創成学類卒、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了、博士(学際情報学)。2015年にピクシーダストテクノロジーズ株式会社を起業し、2017年からは筑波大学の准教授兼学長補佐を務める。現在はメディアアーティスト、経営者、教育者、科学者、一児の父など多彩な顔を持ち、幅広く活躍。また数々のメディアや講演会にも出演し、メディアでは「現代の魔法使い」ともいわれている。これまでに『魔法の世紀』(Planets,2015年)や『これからの世界をつくる仲間たちへ』(小学館,2016年)、『日本再興戦略』(幻冬舎,2018年)など数々の著書を出版。

今最も忙しい人とも言われる落合陽一さんの貴重な時間をいただき、「ブロックチェーンや仮想通貨がもたらす日本再興」をテーマにお話を伺いました。

脱・近代で日本を再興せよ

2018年1月31日に出版された『日本再興戦略』(幻冬舎)。テクノロジーや歴史、教育、政治、経済、仕事などさまざまな観点から日本再興のための構想を打ち出しています。同書は発売からわずか1週間で8万部を超えるほどの売れ行きを記録。さらに3万部もの重版も決まり、アマゾンの「ビジネス・経済書」ランキングでも堂々第1位になるほどの注目を集めています。今回のインタビューでも、同書の内容を踏まえさまざまな質問をさせていただきました。

落合陽一氏にインタビュー!ブロックチェーンがもたらす日本再興とは

近代以前の日本はトークンエコノミー的?

――『日本再興戦略』でもカギを握る技術として仮想通貨やブロックチェーンについて書かれていましたが、改めて仮想通貨が日本復興にもたらすものとは何でしょうか?

財政政策と金融政策の話になりますが、現状のポリシーミックス※1では流動性の罠※2に陥ることがあります。それを打開するために財政政策でさまざまな措置を取るわけですが、それは「円」という一つのレイヤー(層)の上で行なっているにすぎません。一方、仮想通貨は一つの国の中にレイヤーが何枚もある状態です。

どういうことかというと、非中央集権である仮想通貨は円と違いポリティカルアクション(政治的な働きかけ)があまり効かない。しかしながら、課税/非課税・規制/規制緩和対象とすることで、ある程度国内の交換などの対応ができる。これはつまりポリシーミックスに無限に、物理的な流通コストのかからないレイヤーが足せるということです。

そのため法定通貨の円だけに捉われず、仮想通貨が国内で流通している状態というのは流動性の罠の改善につながるかもしれないし、ポリシーミックスの一つとして捉えることができるので、悪いことではないと思います。

例えば、昔は年貢(米など)があったけど、小判(法定通貨)とはまた違うものです。米は信用により売買されていて、それは仮想通貨にも通じることだといえます。しかも先物・現物の取引があるし、農業改革というテクノロジーイノベーション政策が短期的にも金融的な効果も持ちうるような面白い状況でした。

※1 ポリシーミックス・・・政策目標を達成するために複数の政策(金融政策、財政政策など)を組み合わせて同時期に実施すること。それぞれの長所と短所が掛け合わさり相乗効果が期待できるとされています。
※2 流動性の罠・・・金融緩和により金利が一定水準以下に低下すると、投機的動機に基づく貨幣需要が無限大となること。この状態になると、通常の金融政策は効力を失います。

――「近代以前はトークンエコノミー的」とおっしゃっていたことにもつながるということですか?

そうです。この米と仮想通貨の共通点にはトークンエコノミーによる、テクニカルな改善に基づいたブロックチェーン的な要素があります。先に述べたように農業的に、昔は米作りの技術が発達すると、財政・金融の政策をするのと同様の効果があらわれていました。これはブロックチェーンでも同じことが期待できるのです。ブロックチェーンが技術的に向上すると決済時間が短くなったりお金が流動的に動いたりと、金融・財政政策と同様の効果があらわれます。昔はそこまで先のことまで考えて政策を打ち出してなかったとは思いますが、自然と最適解が見つかっていた状態なんでしょうね。

――逆に、落合さんの提唱する1850年代以降の「近代」になって得られたもの、またそれが限界に達していると感じるのはどのような点ですか?

近代になって得られたものは、インフラと言葉。近代化したことは日本にとって悪くはなかったのですが、逆に限界に達している点は、例えば今の日本での役所で手続きをする際の確認や承認のための手続きです。信用情報に関する問題や、自動化省人化に関わること、これらはブロックチェーンで置き換えることが可能だと思います。これは財政が逼迫(ひっぱく)した地方行政にこそ適応すべきことだと思います。

トークンエコノミーによって変わりつつある現在

――未来を変えうる仮想通貨。現在は“投機”目的で利用されることが多いですが、今後投機以外の目的で使われることが増えるとなると、どのようなことが必要になると思いますか?

仮想通貨が投機以外の目的で注目されるには、2つの要素が必要だと考えます。
1つ目は実際に通貨として利用されること。例えば給料の一部を仮想通貨に変えてみたり、決済をするときに円と仮想通貨どちらで払うか選択するなど、お金を受け取るときも支払うときも、今一番得な通貨は何かを考えるような投資意識を持つことが大切です。この投資意識を持つことが、リスクを分散させることにもつながります。

そして、あるお金に変えてポジションを持っているという意識があれば、さまざまな層にまたがるコミュニティの中でお互いにどういうリスクを取り合っているか意識することができます。それは、社会に貢献するという意味では非常にいいし、実際によく使うサービスではそういう持ち方が良いと思います。

そして2つ目は通貨コミュニティが活性化されること。良い例としてモナコインがありますね。

具体的に言うと、最初にモナコインを持っていたユーザーたちはモナコインの価格の上昇によって資産がある状態。その人たちがモナもなかを買ったり、モナを使ったサービスを利用したりすることで、ステークを持ってる人がインフルエンサーになっています。自然と投資したくなる循環システムができているという状態が結果的にPoI(Proof of Importance)※3やPoS(Proof of Stake)※4の「ように」なっているのです。
その人たちは、モナコインのコミュニティが盛り上がれば自分の資産も増えるし、そもそもモナコインが好きというのもありますよね。こうした善意でまわってる特殊なコミュニティというのは一つの答えでもあると思います。もともと仮想通貨好きが集まっている気もします。

※3 PoI(Proof of Importance)・・・ブロックチェーン上のすべてのアカウントに重要度が割り振られ、その数値によって報酬額が変動する仕組み。資産の量で判断されるのではなく、通貨ネットワークを積極的に使う人ほど報酬を得られます。PoWやPoSに比べ、PoIは富の分配や平等性という点に注目されています。
※4 PoS(Proof of Stake)・・・持っているコインの割合が多い人ほど通貨を鋳造(BTCでいうマイニング)ができる仕組み。自己利益のために通貨の信用を貶める行為を防げる設計になっていて、多くのアルトコインに採用されています。

――最近ではブロックチェーン技術や仮想通貨が浸透し始め、さまざまな変化が見られています。その中で大手送金会社や金融機関で実用化が進んでいるのは中央集権化されたシステムが多くみられますが、中央集権化されていることがメリットと考えられますか?

単にPoW(Proof of Work)※5のような仕組みよりも中央集権化されている企業の方がコストを抑えられるからだと思います。ボゴソート※6のような探求ではコストばかりかかってしまう。そこの社会実験をしてる時間もコストもない。しかしながら、中央集権化されていることがメリットになるかというとそこは難しいところです。

例えば僕たちが普段使っているsuicaやPASMO(ICカード)は便利ですよね。でもこれが円建てじゃなくて毎日価格が変わって売り買いされる状態になると、日常生活では使いづらくなってしまいます。もっと例えるなら、“白菜”の価格ではなく“白菜コイン”の価格が変動しているということ。それでは今の僕らの生活では使えませんよね。

しかし、自動化や最適化処理を行うことで、自分が持っているウォレットの中で一番効率のいい通貨で払えるようになれば使いやすくなるので、僕は後者を推進したいと思っています。
つまり、ポートフォリオを分散化させた方が金融政策として良いし、どの通貨を使ったら一番お得か(使う段階でレートが一番いいものを選択する)というのはコンピュータだったらすぐに計算できるため、人間のルールベースで判断する必要がなくなるということです。そうすると購買者と販売者の両方にリスクを分散することが可能になると思っています。

※5 PoW(Proof of Work)・・・取引の正しさを証明するためにコンピュータが計算を行う仕組み。分散管理システムであるブロックチェーンで活用されていますが、かなりの電力と高性能のコンピュータを必要とするため、コストがかかるとされています。
※6 ボゴソート・・・ボゴソート (bogosort) は、ソートのアルゴリズムの一つ。平均的な計算時間はO(n×n!)で、非常に効率の悪いアルゴリズムとして知られています。安定ソートではありません。

――そうなったらすごく便利ですね。

僕は普段からそうしてますよ。日本円で割り勘して誰かにお金を払うとき、XE currencyというアプリでドルやユーロなど通貨の為替を見ながら「どの通貨で払えばいい?」と尋ねます。また割り勘するときは法定通貨だけでなく、BTC建ても候補に入れています。最近では、送金手数料は高いですけどね。仮想通貨が気軽に利用できるようになれば、もっと広まっていくと思いますよ。

――中央集権化されているシステムが企業で利用されている一方で、DEXのような分散型の取引所も増えつつあります。今後は中央集権型の取引所と並走していくと思われますか?

非中央集権の取引所は、僕個人としては賛成です。ただ個人ではなく国家の枠組みで捉えると、中央政府との関係性ではポリシーミックスが難しい気がします。そして、それより大きな、コスモポリタン的な考え方でいえば、賛成です。

例えば仮想通貨取引所が国内に法人としてある分には税率を変えたりすることで国はアクションが取れるけど、非中央集権の取引所があったときにはアクションを取るのが難しいですよね。そして非中央集権の取引所のニーズはあるものの、使われる目的はほとんど節税になります。それは投資家だけでなく一般の人の年収レンジでも節税になってしまう確率は高くて、それはベーシックインカムとは逆の発想です。つまりベーシックインカムを導入するのではなく、お金を持っている人がより税金を払わなくてすむ世界、それが投資に再投下されることによる富の再配分と循環系を考える。

そうなることが、再配分としていいかはわからないですが、僕はポジティブにその世界を捉えています。現時点では明確な答えは出せないですし、地方自治などとも組み合わせて考えて行く必要があるんじゃないでしょうか。

ブロックチェーンで変わる“地方”と“個人”

――地方自治に関して、落合さんが日本再興戦略で書かれていた「地方ICO」も先述のような活性化されたコミュニティに近いと感じました。この先地方ICOを実現するにあたり、特産物などがない地域はどういうアプローチが取れるとお考えですか?

これといった名産品がなくても需要はあると思います。例えば、地域によっては地震が全然起きないということも一つの魅力ですよね。これまでの市場経済だけではないその土地のパラメーターに対する評価基準はこれから変わる気がしますよ。最近では佐賀のイカのPRの仕事をしたり、有田焼を使ったり、名産品に対してのアプローチも行なっています。そういうものと仮想通貨のシナジーはあると思いますね。

――地方ICOをスピーディーに実現するとしたら、誰が主体となるのでしょうか?

地方銀行と民間企業だと思います。例えば地方銀行と民間企業が半々で通貨管理組合をつくり、詐欺コインを増やさないためにもその交換比率に関するアクションは地方銀行が決められるといいですね。もちろん非中央集権型の取引所も回るように本気で考えるなど事例に合わせてフレキシブルな対応ができるといいですね。

――前者の場合、通貨管理組合は中央集権にはならないのでしょうか?

前者の場合でも通貨としては非中央集権です。地方銀行は取引所のような役割を受け持ち、非中央集権の通貨管理組合が管理所となります。管理所は運用をメンテナンスすると言う意味でICOをして対価を請求するというだけで、誰も通貨を保有するわけではありませんからね。

一方、中央集権というのは誰かの決定によって何かが決まることです。ただ、そのなかでもローカルヒットができるとそれはやがて非中央集権になります。
教育がその良い例ですね。教育は2パターンあって、文部科学省が言ったことで決まるのが中央集権。でも教育委員会のようにコミュニティごとに違う教育をするのが非中央集権。

仮想通貨も同じで、一つひとつは中央でも集権でもありません。“ムラ(村)”というものに近い。集権ではあるものの、中央ではないということですね。

――ブロックチェーンやトークンエコノミーが浸透した時代ではどのようなマインドセットが求められると思いますか?

今まで価値にしていなかったものでも、トークン化されることで資産価値に計上されるという考え方を持つことです。これは結構重要な考え方で、例えばタイムバンクやVALU(バリュー)では自分の価値が表示されますが、実際に資金として持っているわけではありません。でも、自分の時間も売ろうと思えば売れますよね。そのときの価値は特技や他の人よりも秀でているものがあるほどその間口は広く、そして個別の価格は高くなるはずです。時間だけでなく「いざとなったら●●できる」というものを増やしておくと、本当に必要なときに有効に活用できる。その結果みんなの資産が増えると思います。その資産はどう形成されてるかといえば、先に述べたようにお互いがお互いにリスクを取り合っていることです。将来の社会像は常に仮定ですが、やがてそういう状態に全国民がなっていればいいと僕は思っています。

――自分の持っている個性や技術が資産のポートフォリオになるということですか?

そうです。そうなると再就職や転職、もしもの失業のとき、また他人と何かの価値を交換するときに強い。その強みを持っていると、日本の国がどうなるかということにビクビクしなくても“個人”として生きていけるし、逆にみんながそうなれば国も安定します。そういうことを手に職と言ったわけですが、それが金融価値として試算されている状態は僕は望ましいと考えています。

そもそも、政府の意思決定に、議会制民主主義にて、何か働きかけないと末端の人々はその市場への要求を提出できないという状態にあること自体が間違っています。そういう流れを変えるためにも仮想通貨をはじめとした新しい市場を作ることは向いているし、そのためにも詐欺コインがなくなって欲しいと思っています。仮想通貨をもっとポジティブに発展させるには、詐欺コインも解決すべき大きな問題となっていますね。

暮らしや価値のあり方を変えるブロックチェーン

今はまだ投機としてのニーズが高い仮想通貨ですが、通貨としての面でも技術的な面でも、わたしたちの暮らしが大きく変わる日は遠くないかもしれません。また、それに伴いこれまで根付いてきた価値観、地方や個人のあり方も大きく変わるでしょう。日本中にブロックチェーンが当たり前のように普及するためには、解決しなければならないことが多いかもしれませんが、ブロックチェーンが日本の将来に大きな影響を与えることは間違いなさそうです。

取材:三矢晃平/文:BITDAYS編集部/撮影:堅田ひとみ

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BITDAYS編集長です。
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