インタビュー

オンライン融資が当たり前の世界を目指すアルトア株式会社岡本氏インタビュー

インターネットを通じ、スモールビジネス向けに融資を行うアルトア株式会社。「弥生会計」を提供する弥生の子会社でもあり、弥生会計を利用している事業者向けのオンライン融資サービスです。

アルトアが開発する与信モデルは、弥生が持つ会計ビックデータ、オリックスの与信ノウハウに対してAI技術を活用した新しいモデルであり、これまでよりも精度の高い与信能力を実現します。

今回はアルトア株式会社の代表取締役・岡本浩一郎氏に話を伺いました。

【岡本浩一郎氏プロフィール】

1969年横浜市生まれ。東京大学工学部卒業、カリフォルニア大学 ロサンゼルス校(UCLA) 経営大学院修了。野村総合研究所、ボストンコンサルティング グループを経て、2000年6月にコンサルティング会社 リアルソリューションズを起業。2008年4月より弥生株式会社 代表取締役社長に就任、2017年2月にアルトア株式会社を設立し代表取締役社長に就任(弥生株式会社 代表取締役社長と兼務)。

40~50代を中心に多岐にわたるアルトアのサービス利用者層

―現在のアルトアの利用ユーザー層について教えて下さい。

ご利用いただいてる方は、実に多岐にわたります。アルトアはインターネットで完結する融資サービスなため、若い方が多いと思うかもしれませんが、事業者向けですので年齢層は40代から50代の方が中心です。中には80代の方もいらっしゃいます。いいサービスを提供していれば、利用してくれる方の年齢は問わないのかなと思っています。

―利用者の地域に特性はありますか?

東京をはじめ関東圏が多いという傾向はありますが、基本的には全国津々浦々です。業種としても、一般的な産業分布に近い形で、小売・卸、サービス業など、さまざまな業種の事業者の方にご利用いただいています。

―アルトアはスモールビジネス向けとされていますが実際にそういう方が多いですか?

基本的には小規模な事業者の方が多いです。アルトアの出発点が弥生会計を提供しているソフトウェア会社「弥生株式会社」ですが、弥生のお客様は小規模な事業者の方です。具体的には年間売上高が1億円未満の事業者が約7割です。
事業者向けの融資というと、それなりに確立された事業をされてる方向けに何千万円、何億円というイメージがあるかもしれませんが、我々のサービスでは、融資の上限金額は300万円です。そのため、比較的小規模なお客様が小回り良く使っていただける融資としてご利用いただいています。

―実際に利用している方の評判はどうでしょうか。

我々のウェブサイトに「お客さまの声」というページを設け、お客様の事例を挙げています。
日本では割とお金についてオープンに語ることをためらう雰囲気があり、ましてやお金を借りることを堂々と話すというのはもっとハードルが高いことだと思います。ですから融資のサービスでお客様が実名と顔写真を載せて、人によっては借入金額も自身で語られるというのは結構珍しいことだと思っています。

しかしアルトアでそれができているのは、お客様の満足度が非常に高いということです。”こんなサービスがあったのか”、”このサービスはもっと世の中に知られるべきだし、そのためなら協力します”ということで皆さんにご協力いただくことができました。
我々はまだ厳密にNPS®などの計測はしていませんが、これまでの一般的な金融サービスと比べて圧倒的に満足いただいている手応えを感じています。

アルトアウェブサイト「お客さまの声」のページへ
※NPS®:「Net Promoter Score(ネット・プロモーター・スコア)」の略。顧客ロイヤルティ(企業やブランドに対する愛着・信頼の度合い)を数値化する指標として用いられている

―岡本さん自身が印象に残っているお客さまの声や反応はありますか?

「お客さまの声」にも掲載されていますが、金融機関ご出身の方が代表をされていて、いわば「融資のプロ」として活躍されていた方に頼っていただけたのは嬉しいですね。
“事業は生き物”ですから、困った時・必要な時にタイムリーに資金の調達が必要になります。それを従来の金融機関がなかなか埋め切れていないところをアルトアが実現できており、実際にプロの方に頼りにしてもらえたことは非常に嬉しく思います。

また、『アルトアが事業をちゃんと評価している』という声もよくいただいています。
従来型の融資の判断はどうしても事業規模や業歴などの外形的な基準による部分が重くなります。例えば事業としては結構うまくいっているにも関わらず、立ち上げて1~2年なために金融機関だとなかなか相手にしてもらえないということもあります。

しかし、我々は基本的に丸1年分の会計データさえあれば融資の対象になります。
会計データは会計帳簿そのものです。それをアルトアで分析することによって、事業が今どういう状況にあるのかという部分を把握し、業歴は浅くても事業としては着実に成長の途上にあることが評価できます。
そういった評価に基づいて実際に融資を行っていることから、外形的な基準ではなくて「事業の中身をしっかり見ている」ということはよく言っていただけます。

ユーザーへの融資を審査する与信システムとは

―お客様の審査について、絶対評価と相対評価でいうと評価軸はどのように設けていますか?

表現としては難しいのですが、どちらかと言えば絶対評価です。
AIがいわゆる貸し倒れ、融資をしたけれど返済されないケースになりやすい特徴や傾向を見ているということです。データを元に判断していくエンジンを与信モデルといいます。
このモデルの母集団は、これまで弥生がお付き合いしてきたお客様のうち、一定の条件にあてはまるお客様のデータを、匿名性を確保したうえで活用しています。その中でどういう方が貸し倒れしやすいかという部分を見ているので、そういう意味でいうと相対評価が出発点になっています。
しかし、その後は評価基準に沿って判断されるため、その過程でいうと絶対評価になるということです。
なので一概に絶対評価・相対評価と言い切りがたい部分があります。

―与信モデルは今後変化していく可能性はありますか?

もちろんあります。データを基に判断するエンジンは1回作って終わりではなく、実際に運用していく中で、正確に捉えきれてないことを把握したうえで継続的に改良していかなければなりません。

また、我々の与信モデルはホワイトボックスでなければならないと思っています。ホワイトボックスは、どのようにその結果となったかが説明可能であるモデルです。
つまり、どういう判断をしてこの事業者に対する合否を出すのかという部分が説明できる必要があると思います。そういう中で、与信モデルにどのような変数を組み込むかというのは、やはり人間の知恵が生きているのです。

―人間の知恵も大切な要素なのですね。

そうです。与信モデルに必要なのはいわゆる統計学だけではありません。まず必要なのは会計データに関する知見ですね。そもそも会計データがどういものか分かっていなければ、お客様を正しく判断することはできません。もう一つは、会計データを踏まえてこういう傾向があれば事業者としてはいい状況である、あるいは、よくない兆候だとわかるには、融資の経験が必要です。

逆にいうと、例えば会計や融資について知らない、いわゆるデータサイエンティストだけではいいモデルが作れません。

我々の場合は、会計データに関する知見は弥生から、融資に関する経験はオリックスから持ち込まれています。そのため、今アルトアがやっていることは、弥生やオリックスのこれまでの知見や経験がなければ実現できていなかったと思います。

一方で将来的な部分でいうと、アルトアは弥生とは完全に別会社として設立しているため、この先もずっと弥生の1グループ会社であり続けようとは思っていません。
おかげさまで弥生は日本で一番利用されてる会計ソフトですが、日本の事業者全員が使っているわけではありません。他社の会計ソフトを使われているケースもあるので、そういった時にアルトアが弥生の会計データしか扱えない状態では不十分だと思っています。

そのため他社の会計データも扱えるようにしようと、すでに議論を始めています。これからアルトアはより多くの会計ソフト、会計データを扱っていくようになると思っています。

―40~50代のユーザーが多いとのことでしたが、今後もっと若い人や融資についてあまり知らない人もターゲットとして取り込んでいく予定はありますか?

そうですね。実際問題として20~30代の方もご利用いただいてますし、シニアの方にフォーカスしているわけではありません。むしろターゲットは、従来型の金融から距離がある方です。そういった意味でサイトも従来の金融とは異なるUIやUXを意識してつくっています。


―サイトはすごくポップで経営者タイプ診断も面白いですね。

従来金融機関との接点があまりない方にこそ価値を提供したいと思っています。すでに金融機関から融資を受けている方であれば良いですが、現実には、『金融機関をいろいろ検討したものの、なかなか時間と手間もかかるし断念した』、『そもそも金融機関と接点がない』という方も多いのです。
金融機関の預金口座は持っているが借りたこともないし誰に相談していいのかも分からない方はとても多くいらっしゃいます。

我々はそうした人を「断念層」「諦め層」と呼んでいますが、そういう層にこそ事業するうえで資金調達が重要になります。そのため、いかに敷居を下げて融資を実現するかを考え、従来の金融の常識によらないものをつくりたいと思いました。

―金融の常識を変えるために意識されていることはありますか?

実は我々のサービスサイトやシステムを開発するうえで、特に意識したのがAmazonや楽天です。
最近では皆さんAmazonや楽天でいろいろと購入しますが、このようなeコマースが当たり前になった理由は、いつ物が届くか、サービスが受けられるかが明確になっているからだと思うのです。

しかし金融においては、こういった常識がまったくありませんでした。
ウェブから申し込みはできるものの、審査の回答や融資を受けられるスケジュールについてはまったく見当がつかないというのが普通でした。しかし融資を受けたい側からすると、それが大きな不安になると思うのです。
そのために我々がこだわっているのが、融資ができるという判断、手続きが順調に進むと最短でいつ融資が可能となるかを示すことです。

本人確認の手続きがオンラインで完結できるようになったため、我々は「いつ」ということを明確にすることができます。午前中にお申し込みいただければ最短で当日、午後であれば翌営業日にはご用意できることを明示しています。

オンライン融資の市場と今後の展望


―今現在、オンライン融資の市場が広がってきていますが、今後の市場の拡大や可能性についてはどのようにお考えですか?

オンライン融資の市場に参入される企業は確かに増えてきています。しかし、率直に言ってまだおそるおそるというプレイヤーも多く、市場としては正直まだまだだと思います。
もちろん我々の実績は積み上がってきていますが、まだ爆発的に広がるというところまではきていないのではないでしょうか。

アルトアをたまたま知った方は利用していただき喜んでいただけていますが、そもそもオンラインで融資が受けられること自体が十分に広められていないと思います。
認知を広めることは我々が最も努力すべき領域の一つです。ほかのプレイヤーも増えてきているので、まずは融資もオンラインで受けられることを常識としてつくっていくことから始めなければならないと思っています。

我々はこの業界のパイオニアでもあるので、市場全体を引っ張って行かなければいけないという思いもありますね。

―オンライン融資はこれから拡大していく見込みがあるということでしょうか。

アメリカでは、融資を受けるときはオンライン融資も検討することが常識になってきているように思います。ある意味あって当たり前のサービス。なので、日本もそうなっていくべきだと思っています。

我々のお客様は小規模な事業者が多く、経営者が自ら日中も客先を訪問したり営業をしているため、銀行に行く時間の確保が難しいという現状があります。そういうときにアルトアであれば24時間いつでもお申込みいただけます。こういった利便性が今後ますます求められていくのではないかと思います。中長期的にはオンライン融資が常識になっていくのではないかと予想しています。

アルトアがこの先目指すべき世界とは?


―今後、アルトアのサービスをどのように展開させていくのでしょうか?

「融資を受けるために時間と手間がかかるのを変えていきたい」というのが我々の出発点です。そのため、我々としては事業者向けの融資をいかに利便性の高いものとするかこだわり続けたいと思います。
事業者の方がお金を借りることは必然ですが、「借りる」という言い方もあまり適切ではない気がしています。
要はお金の仕入れ。ビジネスは何かを仕入れてそれを販売することですが、お金もそういう意味では仕入れの一種に過ぎないと思います。
我々は、この「仕入れ」を簡単・手軽にできるような仕組みづくりを目指しています。

現在我々が扱っているのは、比較的シンプルな融資商品のみです。証書貸付と言いますが、融資した金額について毎月12等分でご返済いただく、あるいは6か月後に全額をまとめてご返済いただくなど、比較的シンプルな商品性です。
この商品性を、もっと長期にしたり、上限の金額を上げていくなど、より多くのニーズに応えられるようにしたいと思っています。
さらに突き詰めていくと、お申し込みがいらないというサービスにしていきたいですね。

―申し込みがいらないのは新しいですね。

徐々にですが、いわゆるクラウド会計(会計データがクラウドにある)が普通である状態にシフトしてきています。例えば、お客様に許可をいただいた上で我々がクラウド上の会計や受発注のデータなどを確認させていただき、何日後に支払いがありこのままだと残高が足りなくなるというときに、我々が一定の限度額の中で自動で融資を行うなどの方法が考えられます。

―そこがノンストップになったら事業の資金調達のわずらわしさもなくなりそうですね。

やはりそういう世界をつくっていきたいですね。もっと言うと、アルトアがメインのプレイヤーである必要もないと思っています。
アルトアは与信モデルのシステムを作る会社であり、そいういう仕組みをつくり金融機関に提供していければ良いなと。今言ったような、口座の残高が足りなければ自動的に融資されるというのも、日ごろから付き合いがある金融機関からサービスを提供されるのがベストだと思うのです。
そのため、我々だけで行うのではなく金融機関とパートナーシップを築き、必要なときに日ごろ付き合いのある金融機関から自動で融資がされるような世界を作っていきたいですね。

―実現するにあたり、具体的な目処は立っていますか?

2年と言いたいですが、実際は3~4年くらいでしょうか。
そのトリガーの一つになると思っているのが、2019年10月に消費税率が引き上げになったことです。それと合わせて2023年10月に「インボイス制度」が導入されることも決まっています。
従来の請求書と大差はないのですが、インボイス(適格請求書等)を必ずやりとりしなければならず、おそらくこれを機に請求書は紙でなく電子データでやりとりすることが普通になると思います。
なのでインボイスのデータを活用して、お客様の資金繰りを自動化するという意味でいうと2023年の10月を目安にそういう世界を目指していきたいと思っています。

岡本氏が伝えるアルトアの魅力


―最後に、岡本さんが思うアルトアの魅力やおすすめポイントを教えて下さい。

アルトアの融資は、あくまで手段の一つでしかないと思っています。例えば設備投資のために大きな資金が必要な場合には、時間がかかっても日本公庫や銀行から融資を受けた方が良いでしょう。
しかし事業という意味で言うと、『今週中に資金が足りなくなってしまう』ということは比較的よくある話なので、そういうときに思い出していただける存在になりたいと思っています。
「アルトア」は「あると安心」という意味が込められています。常に頭の片隅においていただき、いざというときに思い出して夜中でも使っていただけると嬉しいです。夜中にお申し込みいただいても、ちゃんと手続き等が順調に進めば翌日には着金できるような、そういう小回りの良さを実現していますから、手段の一つとしてうまく活用していただければと思います。

―大変勉強になるお話、ありがとうございました!

インタビュー・撮影:NANASE

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この記事を書いた人
BDディレクター。2017年12月に仮想通貨取引を開始。最近はいろんなポイント集めにはまったり、キャッシュレス化するべくお財布のダイエット(不要なカードを減らす大作戦)に挑戦したりしています。

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